診察券をつくる前に

診察券を
つくる前に

そもそも診察券は必要なものなのか?

2019.07.16

電子マネー、ICカード、WEB、Eメール…。様々なものが電子化されている現代において、診察券というフォーマットは本当に必要なものなのでしょうか?しかし、磁気やICといった機能を持つ診察券が増加する一方で、電子的な機能を持たないアナログ診察券がなくなる気配はありません。いったいそれは何故なのか?そんなこと考えたことありますか?

診察券の役割

1度クリニックに訪れると配布される診察券。診察券には、患者1人1人に割り当てられた番号を照合し、クリニック内での情報管理をスムーズにする役割があります。それと同時に、クリニックの電話番号や住所、受付時間を記載することで、利用者がクリニックの情報をいつでも手元に置いておくことができます。裏面に予約表をレイアウトすれば、次の予約日時や通院した履歴を確認することもできます。

診察券の電子化

診察券の実務的な役割を考えると、「診察券は情報である」と言うことができます。情報である以上、間違いなく電子化によるメリットがあります。一部地域では既に実践されていますが、デジタル診察券は情報の保存と共有において、合理的に患者の情報を管理することができます。デジタル診察券が未だに一般的でないのは、すべてのクリニックで対応できないことや、国で進めたマイナンバー(個人番号)が予想より普及しなかったことに原因があります。

情報を合理的に処理するメリットが、とても大きい診察券の電子化。その一方でクリニックのコスト負担や、利用範囲の狭さ、アプリなど互換性の問題など、電子化の障害となる課題は山積みです。

文字情報だけでは伝わらない情報

様々なものが電子化される現代で、未だに紙の名刺やカタログが使われているのはとても不思議な現象です。10年以上前に「10年後には紙の名刺はデジタル化されてなくなっているだろうな…」と思った記憶がありますが、紙の名刺というフォーマットは10年経っても変わる気配がありません。初めて会った相手に紙の名刺を渡す。ビジネスにおいて、必須と言っても過言でないマナーです。名刺に記載されているものは「文字情報」なので、当然デジタル化の対象になります。お互いにスマホを「ピッ」っとかざして情報を交換できれば、電話番号やEメールアドレスをすぐに引き出すことができ、引き出しに名刺のストックが溢れることもありません。

紙の名刺がなくならない理由として大きいのは「習慣」だと思います。しかし、それ以上に着目すべきなのは、デジタルでは受け取ることのできない情報です。例えば紙の厚さ、紙の質感、文字の配列、文字や背景の色といった「デザイン」はデジタル化された文字情報では伝わることはありません。シャープなデザインの名刺を渡せば「先進的な仕事をしている会社」という印象が伝わり、優しい雰囲気のデザインの名刺を渡せば「手厚く対応してくれそう」という印象が伝わります。住所や電話番号といった実務的な文字情報とは異なり、ふわふわとした曖昧な情報になりますが、とても重要な部分です。

アナログの診察券にも同じように「デザイン」があり、それが文字情報だけでは伝わらない情報を伝えています。電子化された診察券には、残念ながら個別のデザインを入れ込むことが難しい。情緒を削ぎ落とした実務的な文字情報だけになってしまうからです。文字情報だけでは伝わらない情報「デザイン」は、クリニックの性格をはじめ「個性」を表すことができるため、他のクリニックとの差別化を図ることができます。そういう理由から、アナログの診察券は今後も機能しつづけると考えられます。